「モモ」を読むと、子どもの頃に友達と夢中になって遊んだことや、学校の帰り道に長々と話し込んだような、たわいもない楽しかったことを思い出しました。児童文学なので、文章はひらがなで読みやすく、詩的でワクワクさせられ、純粋に物語に引き込まれます。
しかし、物語の軸は社会の大きな問題を描いており、大人も子どもも現実と照らし合せて考えてしまうのではないでしょうか。
自分にとって大切な時間のことを忘れてしまうほど、時間に追われて生きる。現代の社会でも働き方によっては、よくあることなのではないかと思います。
物語の中では、浮浪児であるモモが人間らしく生きる象徴として、時間どろぼうである灰色の男たちと様々な攻防を繰り広げます。
1973年に書かれた本書は、約50年経った今でも変わらず私たちに”人間らしく生きること””時間とは何か”を考えさせられる一冊です。
--引用--
モモはただいるだけ、みんなと一緒に遊ぶだけです。ところがそれだけでーどうしてなのかは誰にもわかりませんがー子どもたちの頭に、すてきな遊びがひとりでにうかんでくるのです。毎日みんなは新しい遊びを、きのうよりもいっそう素敵な遊びを考えだしました。-暴風雨ごっこと、ほんものの夕立
うちの親はぼくのことをだいじに思ってるよ。でも、いそがしいんだ、どうしようもないじゃないか。ひまがないんだもの。そのかわりに、トランジスター・ラジオまで買ってくれたんだよ。とっても高いんだぜ。ぼくをだいじに思っている証拠じゃないかーそれとも違うかい?-友達の訪問と敵の訪問
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モモ
著:ミヒャエル・エンデ
訳:大島かおり
岩波少年文庫
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※かなり良い状態の一冊です。